昨日、「ブロックチェーンとWEB3.0」で「ブロックチェーンは改ざんが事実上不可能」と記載しました。しかし、過去に記録を巻き戻すなどの対応が取られたことがあります。
日経サイエンス2018年5月号で、慶應大の斉藤賢爾氏のコメントで、さらっと記載されており、その要旨を記載します。
・2010年8月の攻撃と、2013年3月のバージョンアップ不具合時、コミュニティの操作で歴史を巻き戻している
・ノードは1万程度なので、現代でも、例えばボットネットを使って数千の不正ノードを参加させてネットワークを分断するような攻撃は可能
引用改変:日経サイエンス2018年5月号
こちらに記載されていた過去の2件の巻き戻しについて、さらっと調べました。
ビットコインネットワークの危機事例
まずは1つ目。「なにかおもしろいこと」さんからの引用です。
2010年
08/15 ビットコインのバグにより1,840億BTCが偽造されるブロック74638内に、184,467,440,737,09551616BTCを新しく作成したトランザクションが発見されました。
トランザクションの出力チェックの際にオーバーフローする場合が考慮されていないバグがあり、そこをついてビットコインが偽造されたそうです。
このビットコインの偽造が発見されてから5時間以内に新しいバージョンのクライアントが公開されました。
これによりブロックチェーンが分岐しますが、次の日に新バージョンでマイニングされたブロックチェーンが問題のトランザクションを含むブロックチェーンを追い越し、全てのノードがこれを受け入れました。引用:なにかおもしろいこと
対応がスピーディーですね。当時のディスカッションの様子が下記スレッドで一部終えます。
https://bitcointalk.org/index.php?topic=822.0
続いて2つ目です。2013年3月の不具合。過去記事からの引用です。
ビットコインは2013年3月に、ソフトの不具合で予期せぬチェーン分岐を起こし、その価値を失いかけたことがあります。あるマイナーが新版のソフトで掘り続けていたら、後で不具合が指摘され、「新版を取るか旧版を取るか」の判断を、ネットワーク全体が迫られました。
そのような中、既に5,000ドル分以上のビットコインを掘っていた「エリュースリア」という大口のマイナーが、自分が損をする事を選びます。ネットワーク全体が信頼を失い、ビットコインの価値が無くなってしまう事を、自分が損する事で防いだのです。そちら側にインセンティブが働いた、という事です。
この状況下でバージョン0・
8のブロックチェーンを存続させるわけにはいかない」。 ハンドルネーム〝エリュースリア〟を名乗る、 BTCギルドの運営者はこう言った。 チャットにいた開発者らは、
エリュースリアが全体の利益のために犠牲を払おうとしていること に感謝した。約一時間後にようやく移行を完了させると、 エリュースリアは損害を計算した。 「0・ 7に戻すのが遅れていたらダメージはもっと大きかったはずだ。 といっても今回のフォークで一五〇~二〇〇BTC(五〇〇〇 ドル以上)の損害が生じた」と書いている。 ビットコイン生態系では、ビットコイン価格は数時間で二〇% 近く下落して三七ドルになったほか、 ネット上にはいくつか陰気な記事が載った。 引用:デジタル・ゴールド--ビットコイン、その知られざる物語 | ナサニエル・ポッパー, 土方奈美 | 工学 | Kindleストア | Amazon
このようなインセンティブのシステムがあるので、ビットコインは強い。
過去の2つの危機、ともに、「インセンティブ」が働いて修復された、という点が興味深いです。
コメントを残す